Nakajima Lab

Department of Anatomy

Keio University School of Medicine

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Reelinが神経細胞移動の最終ステップを制御する機構

 大脳皮質層構造が “inside-out”様式で構築されるためには、辺縁帯直下で移動を終えた早生まれの先輩神経細胞たちを、遅生まれの後輩神経細胞たちが「追い抜いて乗り越える」必要がある(図Aムービーを参照。なお、このムービーでは単純化して細胞が一列に横に並んで一緒に移動していくが、実際には個々バラバラに移動していく)。どのようなメカニズムで後輩細胞たちは先輩を「乗り越える」のであろうか?

 我々は、辺縁帯の直下に、未成熟神経細胞が濃縮した特殊な領域が存在することを発見し、primitive cortical zone (PCZ)と命名した。移動神経細胞は、このPCZ直下に到達すると移動様式をそれまでのlocomotionと呼ばれる様式から新たにterminal translocationと呼ばれる様式に変換することも見いだした。移動細胞がPCZを適切に通過できず(=移動様式をlocomotionからterminal translocationに変換できず)先輩を追い越せないと、“inside-out”様式の細胞配置が大きく乱れて層形成が破綻することもわかった(図B)(Sekine, et al. J. Neurosci., 2011)。

図A 大脳皮質層形成の過程

 では、PCZ直下でその移動様式を変換する過程はどのように制御されているのか?我々は、移動神経細胞に発現するReelin受容体ApoER2/VLDLRにReelinが結合すると、図Cに示すカスケードが細胞内で活性化され、細胞表面のインテグリンα5β1のリガンド結合活性を亢進させることを発見した。辺縁帯にはインテグリンα5β1のリガンドであるフィブロネクチンが濃縮していることも見いだした。インテグリンα5やインテグリンβ1の移動細胞での阻害によりterminal translocationが障害され、最終的な層構造のパターンも乱れることなども明らかにした。以上により、移動神経細胞がPCZ直下に到達して先導突起先端が辺縁帯に進入すると、Reelinがその受容体を介して細胞内からインテグリンα5β1を活性化し、その結果として突起先端が辺縁帯のフィブロネクチンに結合しterminal translocationが開始されると考えられた(Sekine, et al. Neuron, 2012)(図C)。

図B 移動の最終段階が阻害されるとinside-out様式の細胞配置が大きく乱れる

図C リーリンによるterminal translocationの開始制御機構